「弘法筆を選ばず」道具を最短で自分の味方にする方法【食べるエッセイvol.20】
どんな肉も、長い包丁で切れるように。
仕事道具とは、自分自身の行為の機能を助けてくれるものです。
画家であれば筆、演奏家であればピアノ、僕にとっては包丁が「道具」に当たります。
みなさんは「弘法筆を選ばず」ということわざを知っていますか?
これは、「弘法大師(空海)のように書に優れている者なら筆の善し悪しは関係ない」という意味で、
・優れた技量があれば道具に左右されない
・達人の域にある者は如何なる状況下でも失敗しない
など、様々な例えに使われています。
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先日、入社して数ヶ月のスタッフが、長い筋引き包丁を使って、筋引きをしていました。
包丁には、用途や肉の種類に応じて様々なサイズがあるのですが、短い包丁と比べて、筋引きの際に長い包丁を使うのは、やや難易度が高いのです。
聞けば、ベテランスタッフのMさんに「どんな肉も、長い包丁で切れるように」と教わったと言います。
確かにMさんは、普段から筋引きも整形もカットも、長い筋引き包丁一本で行っています。
その理由を聞くと、
彼は次のように話してくれました。
「昔『短い包丁じゃないと、筋引きよぉせん』と道具を言い訳にした職人がいたんです。
自分はそうはならないぞ、と思って、それ以来どんな肉でも包丁一本で切れるように訓練したんですよ」
なるほど!
と僕は膝を打ちました。
「弘法筆を選ばず」とは、きっと彼のような人を言うのでしょう。
どんな包丁でも使いこなせてこそ、
食肉のプロです。
一方僕は、どちらも使いこなした上で、さらに高い作業効率と品質を求めた結果‥‥‥
現在は、上記の画像のように、筋引き包丁と短い筋引き包丁を肉によって使い分け、それぞれの包丁の良さを引き出す、という方法を選んでいます。
(※画像の包丁は、共に“すじ引き包丁”)
道具を最短で自分の味方にするために
繰り返しになりますが、道具は、自分自身の行為の機能を助けてくれるもの。
使いこなすことができれば、
頼もしい味方になるでしょう。
では、具体的にどうやって訓練すれば良いのでしょうか。
答えは、Mさんの指示を受けたスタッフのように、まずは難しい方から取り組むこと。
「難しいもの」から「簡単なもの」へ。
この順番が大切です。
車の運転だって、はじめにミッションの免許を取ってしまえば、後のオートマチック操作が、うんと楽に感じられませんか?
とはいえ、目指すは「弘法筆を選ばず」。
どんな分野でも、道具に左右されない優れた技術を身につけていきたいものですね。
それでは今日はこの辺で。
みなさまの今日が、明日が、より豊かでおいしいものになりますように。肉岡肉道でした。
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