『飾りじゃないのよ 切れ目は』隠し包丁と飾り包丁の意味を問う。【食べるエッセイvol.22】
いかほどの油をまき、いかほどの墨すみを用い、いかほど時をかければ我が軍すべてを焼き尽くせるか!?
スリーキングダム(三国志)が好きです。
「上方谷(じょうほうこく)の戦い」なんて観た日には、胸が熱くなってしまう。
感情移入してしまうのです。
諸葛亮の策略により炎に包まれた司馬懿は、こんなことを言いました。
『もう逃げられまい。いかほどの油をまき、いかほどの墨すみを用い、いかほど時をかければ我が軍すべてを焼き尽くせるか、あの者(諸葛亮)は分かっておるのだっ!』
いかほどの肉を使い、いかほどの味をしみこませ、いかほど時をかけて火を通せば、我が肉はおいしくなるのか!?
味のしみこみや火の通りをよくするために入れる切り込みを「隠し包丁」と言います。
料理の見栄えをよくするために入れる切り込みは「飾り包丁」。
どちらも肉に施すカットなのですが……
見よう見真似で、表面だけを捉えられてしまうのが、非常に残念でなりません。
『両面4㍉感覚で斜交いに飾り包丁を入れる』
脂と筋肉の間には筋膜が必ずあり、筋膜は熱を与えれば縮み固くなります。
生肉は柔らかく、フォークやナイフで切ろうとしても、クニュクニュとうねるだけで、何とも切りにくい。
輸入牛を提供するステーキ屋さんでは、しばしば「レアがおすすめですよ」なんて言われたりしますが「いやいや、フォークとナイフですじや脂が伸びて切りにくいでしょ? 」と。
すかさず「ウェルダンや、焦がせ言うとん違うで! あくまでしっかりと熱を通して!」と注文したのでした。
飾り包丁でも、焼き加減でも。何かを施す時には「根拠と意味」が大切。
話は逸れましたが、大事なことは一つだけ。
飾り包丁でも、焼き加減でも。
何かを施す時には「根拠と意味を持ちましょう」という話です。
例えば、4㍉とてブロック焼きした場合、概ねサイコロ状のカットとなります。
これを適当にハサミでカットする人は少なく、一口大3センチ程と読む。
4㍉斜交いに切れ目を入れれば7から8切れ目が入ってる寸法ですから、飾り包丁を入れる必要は全くない。
意味や根拠なしに「綺麗だから」「見栄えをよくしよう」などと、無作為に飾り包丁を入れるのは、むしろ野暮な行為でしょう。
隠し包丁も同じです。
カイノミやフランク、イチボ、ヒウチなどの高級部位に、隠し包丁は必要ない。
筋や脂を除去したハイスペックな肉たちに、これ以上の火の通りや、味の染み込みを求めるのは、何ともおかしな話です。
そのまま食べておいしい部位は、
そのまま食べたらよろしい。
ブロック状態のまま周りから焼く。
中心には遠くから優しく優しく熱を加える。
ハサミなどで切落したら、表面を炙っていく。
すると、ローストビーフのようなタタキのような焼肉・ステーキに仕上がる。
シンプルかつ、1番うまい食べ方です。
あなたが焼いた肉がおいしくないのは、肉にあった扱いができていないからかもしれない。
小手先だけのテクニックに、頼りすぎているからかもしれない。
「おいしい」にパフォーマンスはいらない。
店の人気を集めようと「写真映え」を追求するのも美しくない。
過剰に施したり、過剰に取り除いたりすれば、たちまち肉の旨味は逃げていきます。
とはいえ、派手なもの、目新しいものに注目が集まってしまいがちな世の中だからこそ、「人気集めたもん勝ち」なビジネスが生まれては、また消えていくのでしょう。
ならば僕はもう一生孤独で良い。
ただ真っ直ぐに肉の良さを引き出していくことにしましょう。
これからも、ずっと。
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そんなことを考えていると、中森明菜さんのあの名曲がふと頭を過ぎりました。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。
この曲でお別れしましょう。
それでは、聴いてください。
肉岡肉道で『飾りじゃないのよ 切れ目は』です。
どうぞ!(笑)
ー飾りじゃないのよ 切れ目はー
歌:肉岡肉道
“ 飾りじゃないのよ♪ 切れ目は~HaHa~
切るなと言ってるじゃないのHoHo~ ”
隠し包丁も、飾り包丁も。適材適所で活用していきましょうね!
みなさまの今日が、明日が、より豊かでおいしいものになりますように。
肉岡肉道でした。
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