世の常識を覆す。マレーシア在住の華僑に伝えた2:8の法則【食べるエッセイvol.11】
肉の常識を覆す「まるゆうTube【肉翻訳】」
優のYouTubeチャンネル「まるゆうTube【肉翻訳】」。
みなさん、もうご覧になりましたか?
「肉屋のYouTubeなら、さぞうまい肉の食べ方を教えてくれるんでしょう?」と思ったそこのあなた……大正解です!
と言っても、ただのレシピ動画ではありませんよ。
動画のコンセプトは「肉翻訳」。
おいしい肉の食べ方を翻訳、肉の声を聞く……大事なことはいつも肉が教えてくれます。
すでに見てくださった方はお気づきかもしれませんが、実は丸優のYouTubeには、もう1つのテーマがあるのです。
それは「肉の常識を覆す」こと。
世の中には多くの「定番」や「王道」があるように、食肉にも「常識」と呼ばれる概念がありますよね。
例えば、
・「ヘレ肉は柔らかくておいしい」
・「バラ肉は脂っこい」
・「すじは硬くて食べにくい」
・「すき焼きは薄切り肉だ」
などなど……。
しかし、一度立ち止まって考えてみてください。
一体なぜ、私たちはこれらを「常識」と思いこんでいるのでしょう?
テレビで放送されていたから?
なんとなく昔から食べているから……?
肉業界に携わる僕からすると、
「いやいや、そんなことないで」の一言につきます。
確かに、肉の王道と呼ばれる「リブ」「サーロイン」「ヘレ」などは、高級部位として人気がある。
飲食店からも「人気の部位がほしい」という声をいただくことが多いのも事実です。
しかし、これだけは断言できます。
「需要の高い肉(王道)」=「うまい肉」ではない。
問題は「肉の調理方法、そして食べ方にある」と。
「すき焼きやしゃぶしゃぶは薄切り肉って?誰が決めてん?」
僕は幼い頃から、両親の兄弟や住み込みで働く職人さんたちと食事を共にしてきました。
肉屋の子供として育ちましたが、当時我が家で「すき焼き」と呼ばれていたのは「すじ肉」にとき卵をつけたもの。
もっと言えば、除骨の際に、骨についてしまった肉をせせった「せせり」と、今ほど人気のなかった「生ハラミ」だったのです。
数年後、友達の家にお呼ばれした際に、初めて薄切り肉のすき焼きを食べて、びっくり。
僕が時々「すき焼きやしゃぶしゃぶは薄切り肉って?誰が決めてん?」と言うのは、こうしたちょっぴり特殊な家庭環境に由来しているのかもしれません。
マレーシアからやってきた華僑に伝えたこと
普段から「食肉において不要な部分はない」と言い続けている僕ですが、とある日の雑談で、ふと、こんな話をしていたようです。
「海外で日本の牛肉を売るなら、みんなが欲しがる20%(リブ・サーロイン・ヘレ)ではなく、残りの80%(本当はおいしいが有名ではない部位)を制する物が世界を制する」と。
これは「人気部位のネームバリューに踊らされず、肉の旨味を引き出す腕を磨くべきだ」、という意味だったのですが、どういうわけか、この話が回り回って海を超え、マレーシアに滞在するとある華僑の耳に入り……
「その話、詳しく教えてほしい!」とはるばる日本へ訪ねてこられたのです!
「なんて気概のある方なんだ」と感心した僕は、
早速、
・バラ肉のおいしい扱い方
・みんなが欲しがる20%(リブ・サーロイン・ヘレ)を使ったすき焼き
・残りの80%(本当はおいしいが有名ではない部位)を使ったすき焼き
を実演しました。
華僑はすぐ様「本当にうまい肉とは何か」を理解されたご様子。僕にとっても、嬉しい瞬間でした。
長々と書いてしまいましたが、僕の想いはただ一つ。
“常識に踊らされることなく、うまい肉を食べてほしい”
そのためには「肉業界」「飲食業界」の常識を、どんどん変えていかなくてはなりません。
「身も脂もすじも全てを生かす」
「肉の部位を一切無駄にしない」
そんな気概のある店が1つでも増えることを心から願っています。
それでは、今日はこの辺で。
みなさまの今日が、明日が、より豊かでおいしいものになりますように。肉岡肉道でした。
「まる優Tube【肉翻訳】」が気になった方は、ぜひYouTubeでチェックしてみてくださいね!
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