懐かしの給食!給食嫌いの救世主は「ミルメーク」【食べるエッセイvol.6】
僕の給食の救世主「ミルメーク」
焼肉屋に行ってライスを注文すれば、無条件に「大盛りですね!」と言われ、喫茶店でホットコーヒーを頼んだはずが、なぜかビックチョコレートパフェが運ばれてきてしまう。
初対面の店員さんにさえ「あの人、絶対大食いだ」と勘違いさせてしまう僕ですが、なぜか昔から学校の給食だけは、大の苦手で、毎日半ベソかきながらチマチマと食べていました。
あの当時一生懸命給食を作ってくださっていた調理員さんには、本当に申し訳ないのですが、子ども時代の僕は、給食が大キライでした。
良い思い出か? 悪い思い出か? と聞かれたら、完全に後者。
でも、そんな憂鬱な給食の時間を救ってくれたある救世主がいたのです。
同世代の方ならきっとわかってもらえるはず。
あの赤い袋に入った魔法の粉……そう伝説の「ミルメーク」です。
青春の味、ミルメークの味を、みなさん覚えていますか?
とはいえ、今の給食に存在するのか分からないので、知らない方のために、改めてご説明しますね。
ミルメークとは、昭和40年代頃に「子どもたちがおいしく牛乳を飲めるように」と開発された粉末のコーヒー牛乳の素。開発から数年。全国の学校に導入されると、瞬く間に子どもたちからアツい指示を受けた、学校給食における伝説のメニューです。
鼻をつまんで無理やり流し込んでいた牛乳も、ミルメークをサッと混ぜれば、あっという間に、マイルドなコーヒー牛乳に早変わり!全く不思議です。それにこれがもう、本当においしくて。
給食の中で唯一、ミルメークだけは愛していました。
だけど、そのほかの給食メニューは全くダメで……。
小学校に入学したばかりの1年生の頃なんて、給食に全く手をつけられず、お昼休みも居残りで給食を食べる日々。(運動場で早く遊びたいのに!)
でも、学年が上がるごとに、段々悪知恵が働くようになるんですね。
2年生に進級する頃には、先生の「こら、残しちゃダメでしょ!」の静止よりも早く、カンカラカンカンカン〜ッと、残飯入れに残った給食を流し込んで、そのまま運動場に猛ダッシュしていました。
昼休みは死守できたけど、毎日お腹ペコペコ。完全に自業自得です。
いや〜、今振り返れば、めっちゃ悪ガキでした(笑)
と……そこまでは良かったんです。
あの子の救世主になりたかった。
自分が怒られるだけなら良かった。
もっと言うなら、給食が食べられなくてお腹が空くのも良かったんです。
でも、あの日僕は見てしまったんです……。
同級生のAちゃんが、昼休みなしで給食を健気に食べている姿を!(しかも、めっちゃえずきながら食べてる)
あいにくその日は、NOミルメークデー。子どもたちの救世主はいません。
ならば、僕がAちゃんのミルメーク(救世主)になるしかない!!
そんな使命感に駆られ、僕は思わず「助けたろか?」と声をかけていました。
Aちゃんも「うんっ!」と、嬉しそう。
……ここで、Aちゃんの代わりにモリモリ給食を食べてあげられたら良かったのですが、給食大きらいっ子の僕にそんなことができるわけがありません。
先生の目を盗んだ次の瞬間!
Aちゃんの給食を残飯入れにカンカラカンカンカンッと、全部流し込んでしまったものだから、「あ、コラ!何してんの!」と先生も大激怒(そりゃそうだ)。
勢いよく教室を飛び出した僕の後ろから「いい加減にしなさ〜い!待ちなさい!」と怒鳴る先生の声。
僕もガキンチョやったので「うるさい!鬼ババア!」なんて最悪の口答えをしてしまい……。
なんと、父親が呼び出される最悪の事態に。
「私はババアで良いんです。でも、給食を捨てるのはよくないですぅ…」とおいおいと泣きまくる先生。
「も、申し訳ありませんでした!」
父が一緒に頭を下げてくれたおかげで、何とかその場をおさめることができましたが、あれは本当に申し訳なかったなあ、と。
帰りの車で「給食、なんで捨てたんや?」と父。
そこに僕を責めるような様子はありませんでした。
僕は普段から好き嫌いがあまりなく、家でもほとんど食べ物を残さない子どもだったので、父は純粋に不思議だったのでしょう。
「家ではご飯残したことないやろ?何でもようけ食べるやん。でも給食だけは、どう頑張っても無理やねん」
子どもなりに精一杯、思いの丈を伝えました。
父は「そうか……」とだけつぶやいて、また車を走らせました。
それから数日後。
偶然か、それとも父が何か学校に伝えたのか、特別に、PTAも子どもたちと一緒に給食を食べることになったのです。
「いただきます……エイッ」
と、いつものように鼻を摘みながら一口食べて、びっくり。
「ん!?パンがいつもと違う!牛乳も冷たくておいしい!おかずも……ん、食べれる!」
幸か不幸か、その日の給食はめちゃくちゃおいしかったのです。
その晩家で……。
「どうや?給食食べられるやろ?」と父。
「僕も食べれた!でもあれは嘘やわ!!いつもと全然違うむかっお父さん騙されたらあかんで」と涙ながらに訴える僕。
なんだか狐につままれたような不思議な給食の思い出でした。
給食今昔
あれからずいぶん月日が経ち、悪ガキだった僕も、今ではすっかり父親になりました。
息子は毎日「給食が楽しみやわ!今日もお代わりしたわ!作ってる人に感謝だね!」と言っています。
学校給食も、今ではすっかりおいしくなったと聞いています。
あの日の切実な願いが、届いたのか、はたまた届かなかったのか。それは、僕には分かりません。
うまい給食が食べたい。
だって、食べることは生きることだから。
そして「作ってる人に感謝だね」と笑う息子を、父として何より誇らしく思うのでした。
なんだか長くなってしまいましたが、今日はこの辺で。
みなさまの今日が、明日が、より豊かでおいしいものになりますように。肉岡肉道でした。
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