「肉は折り曲げない」〜おいしさを引き出すための合言葉〜[食べるエッセイvol.16】
「肉は折り曲げない」ってどういうこと?
「王様の耳は?」ー ロバの耳!
「O前の耳は?」ー 初耳(笑)
こんなジョークを交わす調子で、僕が「肉は?」と聞いたら「折り曲げない!」と答えるスタッフがいます。
彼女はまだ数ヶ月のキャリアでありながら、僕やベテランスタッフからのアドバイスをどんどん吸収し、この数ヶ月で驚くほどの成長を遂げました。
日々の業務に対する姿勢や成長速度には、いつも「すごいな」と感心させられています。
そんな彼女に伝えていたアドバイスの一つが、冒頭でご紹介した「肉は折り曲げない」。
これは僕が肉と向き合う上でとても大切にしているポリシーでもあります。
肉がそうなりたい自然な形を理解する
肉用牛は本来「食べておいしい肉」として育てられており、ブランドや種類によってそれぞれの風味や良さを保有しています。
言い換えれば、肉にも「個性」があるということですね。
どんな肉でも、最初は鮮度が高い。
そこから酸素に触れ、綺麗な色に発色した時から劣化が進み、酸化というプロセスを経て朽ち果てていきます。
この過程を理解し、元気ハツラツの状態でお客様に肉をお届けする。
それこそが「食肉加工」に携わるものの使命だと、僕は考えています。
みなさんは、
家庭やレストランで肉を食べた時に、
「なんだかパサパサしているなあ」
「肉の旨味が感じられない」
こんなふうに感じたことはありませんか?
ちょっと不思議に思われるかもしれませんが、肉の個性を生かすために最も有効なプロセスは「肉がそうなりたい自然な形」を理解することから始まります。
不自然に手を加えたり、こね回したり、折り曲げたりするなんてもってのほか。
人間の思い通りにしようとした瞬間、肉はたちまち難色を示し、ヘソを曲げてしまうでしょう。
これが肉岡肉道が考える
「肉は折り曲げない」の正体。
料理も食肉加工も、本質を理解し個性を活かすことが大切です。
人間だって、美容室に行って「頼む、俺をキムタクにしてくれ!」と言ったところで、みんながみんな、キムタクみたいな雰囲気になれるわけじゃないですよね(笑)
それなら、その人の容姿や髪質、生え方に合わせて切ってもらった方がよっぽどいい。
美容室に行く目的は、カッコよくなること。
つまり「最高に素敵な個人」なることでしょう。
肉だって同じです。
全ての肉には、部位や種類によって、ぴったりの整形の仕方、個々の調理方があります。
もしあなたが「肉料理がおいしくできない」と悩んでいるのなら、まずは、肉の特徴や素材に興味を持つことから、はじめましょう。
常識や決まった手順にとらわれる必要はありません。
大事なのは「最高に素敵な肉」に仕上げることなのですから。
・
・
「王様の耳は?」ー ロバの耳!
「O前の耳は?」ー 初耳(笑)
「肉は‥‥‥?」
ー折り曲げない!
今度みなさんがお肉を買うときは、
こんな合言葉を思い出してみてくださいね!
それでは、今日はこの辺で。
みなさまの今日が、明日が、より豊かでおいしいものになりますように。肉岡肉道でした。
この記事へのコメントはありません。