染み込むから、おいしい。親父弁当【食べるエッセイvol.01】
世界で1番うまい、親父弁当の記憶
みなさんは、“忘れられないお弁当”の思い出ってありますか?
「う〜ん、そうだなあ」と少し考えて、思い出したんです。あ、忘れられないお弁当が僕にもあるぞ、と。
あれは、まだ僕が小学生だった頃。
もう何日も前から楽しみにしていた、遠足の日のことでした。
遠足の楽しみといえばやっぱりお弁当の時間で、当時の同級生はみんな揃って「どんなお弁当を持っていく?」とワクワクしていたように思います。
「弁当、作ったで」
どこか懐かしいカラフルなタッパー。手渡したのは意外にも、母ではなく父でした。
これから生まれてくる妹の出産で入院していた母に代わって、父が僕にお弁当を作ってくれたのです。
「父さん、どんなお弁当を作ってくれたんやろう?」
楽しみにしていた遠足。いよいよ、待ちに待ったお弁当の時間がやってきました。
タッパーの蓋を開けた瞬間。ふわりと漂う醤油と高菜の香ばしい香りに、思わず「おぉっ!」と小さな歓声が上がります。
↓ちなみに、当時のお弁当を再現するならこんな感じ。
もちろん当時は、三田牛のそぼろなどは入っていなくて……
・ごはん
・醤油で合えた鰹節
・ごはん
・昆布の佃煮
・ごはん
・高菜漬け
・ごはん
・たくあん
最後に、さらに追い高菜漬けでフィニッシュ(きっと親父は高菜が好きだったのでしょうね)。
ギッシリと詰め込まれたごはんの間に、冷蔵庫に入っている佃煮やらおつけものが、ミルフィーユのように層をなした僕の「親父弁当」は、同級生の“それら”と比べても、かなり異質な存在だったのかもしれません。
「父さん、ありがとうな」と心の中で父にお礼を言って、まずは一口。
「……うまっ!!」
冷め切ってしまったごはんは、間におさまる具材の出汁や汁気のおかげで、ほんのりと柔らかく、4種類の具材は、一度に食べるとやたらにうまい。
「なんやこれ!味が、めっちゃ染み込んどる!」
あれから数十年の月日が経って、今こうして長く肉業界に携わらせていただいているのですが、後にも先にもあれほどまでにおいしいお弁当を、僕は食べたことがないのです。
果たして僕の父は、食材を生かす天才だったのか?
ーーー後になって、偶然にも大手お弁当チェーンから「高菜弁当」なるものが販売されました。
あの遠足の日のことが無性に懐かしくなって、期待に胸を膨らませながら食べてみたのですが……何かが違う。
できたてのアツアツご飯は、人を幸せにするはず。なのに、どうしてでしょう?
冷めてしまったあの日の「親父弁当」には到底敵うことができないのです。
その日を境に、僕はこう考えるようになりました。
「冷めてこそおいしい弁当の真髄は、冷めたご飯に味を移す過程にあるのではないか」と。
冷める過程で、味が染み込むお弁当
一般的にお弁当は、冷めてから食べるものです。
人はできたての温かいものにおいしさを感じやすいものです。だから、お弁当は食卓で並ぶできたてのご飯には到底勝つことができない。これが世の中の常識なのでしょう。
だけど、本当にそうでしょうか?
僕の父が作ってくれた「親父弁当」は、冷めたご飯に高菜やたくわん……と、色々な具材の味が染み込んでいて、これがめちゃくちゃうまかった。
意識的か無意識的かはさておき、父は「冷める」という弁当の弱点を逆手にとり、見事に「冷めてこそうまいお弁当」を作り出すことに成功したのです。
そんな懐かしい記憶に思いを馳せながら、先日、今度は当社自慢の三田牛を使って懐かしの「親父弁当」をアレンジしてみました。
・ごはん
・甘めに味付けした炒り卵
・ごはん
・大根の味醂漬け
・ごはん
・ちりめんじゃこと大根おろしを割下で合えたもの
・三田牛のミンチとごぼう、水切りした豆腐を甘辛くそぼろにしたもの
・ごはん
・残りのそぼろ
「お肉をお弁当に入れると硬くなってしまう」「脂が白く固まってしまう」そんなお弁当にまつわるお悩みを解決してくれるレシピです。
もちろん「親父弁当」の具材は、冷蔵庫にあるもので代替え可能。お子さまや旦那さまの好みに合わせて、具材をアレンジするのも楽しいかもしれません。
私たちが信じて疑わない食の当たり前。
「本当にそうだろうか?」と、少し視点を変えれば、より豊かで、おいしい食の世界が広がっているはずです。
Seido家の親父弁当、ぜひお試しください。一度食べれば、また食べたくなる。癖になるうまさを感じてほしい。
それでは、みなさまの今日が、明日が、より豊かでおいしいものになりますように。Seidoでした。
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